「子宮内フローラ」という言葉を聞いたことはありますか。腸内フローラ(腸内細菌叢)は広く知られていますが、実は子宮の中にも細菌のバランスが存在し、それが妊娠の成否に深く関わっていることがわかってきました。
子宮内のラクトバチルス属(乳酸菌)の割合が90%以上の女性は、体外受精の着床率・妊娠継続率・出産率が有意に高いという研究結果が報告されています。つまり、子宮の中の「善玉菌」を増やすことが、妊活の新たなアプローチとして注目されているのです。
この記事では、子宮内フローラとは何か、検査の方法、そして具体的な改善策について詳しく解説します。

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子宮内フローラとは
子宮は無菌ではなかった
長い間、子宮内は無菌状態だと考えられてきました。しかし、次世代シーケンシング技術の発達により、子宮内にも独自の細菌叢が存在することが判明しました。この子宮内の細菌の集まりを「子宮内フローラ」と呼びます。
健康な子宮内フローラの特徴
健康な子宮内フローラは、ラクトバチルス属(乳酸菌の一種)が90%以上を占めている状態が理想とされています。ラクトバチルス属は乳酸を産生することで子宮内のpHを酸性に保ち、病原菌の侵入・増殖を防ぐ役割を果たしています。
子宮内フローラが乱れるとどうなるか
ラクトバチルス属の割合が低下し、他の細菌が増殖した状態を「子宮内フローラの乱れ(ディスバイオーシス)」と呼びます。この状態では以下のリスクが高まります。
- 着床率の低下
- 流産率の上昇
- 慢性子宮内膜炎の発症
- 体外受精の成功率の低下
子宮内フローラと着床率の関係
子宮内フローラの重要性を世界に知らしめたのは、スペインの研究チームによる画期的な研究です。この研究では、子宮内のラクトバチルス属の割合によって着床率に大きな差が出ることが示されました。
| ラクトバチルス属の割合 | 着床率 | 妊娠継続率 | 出産率 |
|---|---|---|---|
| 90%以上(LD群) | 約60% | 約58% | 約59% |
| 90%未満(NLD群) | 約23% | 約13% | 約7% |
この数字の差は非常に大きく、子宮内フローラの状態が妊娠の成否を左右する重要な因子であることを示しています。特に体外受精を繰り返しても着床しないケース(反復着床不全)では、子宮内フローラの検査が有効な手がかりになる可能性があります。体外受精の費用や成功率の詳細は以下の記事で解説しています。



子宮内フローラの検査方法
EMMA検査
EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)は、子宮内膜の細菌叢を次世代シーケンシング技術で解析する検査です。子宮内のラクトバチルス属の割合や、その他の細菌の種類・割合を詳細に把握できます。
ALICE検査
ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)は、慢性子宮内膜炎の原因菌を特定する検査です。EMMA検査と同時に実施されることが多く、子宮内の感染状況を確認できます。
検査の流れ
- 子宮内膜の組織を少量採取する(月経周期の特定の時期に実施)
- 採取した組織のDNAを抽出し、次世代シーケンサーで解析する
- 2〜3週間で結果が出る
- 結果に基づいて、必要に応じて治療やサプリメントを開始する
検査費用は医療機関によって異なりますが、EMMA+ALICEのセットで5〜8万円程度が一般的です。保険適用外のため自費診療となりますが、反復着床不全の方にとっては原因特定の大きな手がかりになります。
- EMMA検査で子宮内フローラの全体像がわかる
- ALICE検査で慢性子宮内膜炎の有無がわかる
- 体外受精で着床しない方は検査を検討する価値あり
- 検査は自費だが、不妊の原因特定に大いに役立つ
子宮内フローラを改善する方法
抗菌薬治療
EMMA/ALICE検査で悪玉菌の増殖や慢性子宮内膜炎が確認された場合、まず抗菌薬で原因菌を除去する治療が行われます。原因菌の種類に応じて適切な抗菌薬が処方されます。治療後に再検査を行い、子宮内フローラが改善したかを確認するのが一般的な流れです。
乳酸菌(プロバイオティクス)の補充
抗菌薬治療の後や、予防的なケアとして乳酸菌の補充が有効です。特にラクトバチルス属を直接補給できるサプリメントが注目されています。
乳酸菌サプリを選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- ラクトバチルス属を含むもの:L.クリスパタスやL.ガッセリなど、膣内・子宮内に定着しやすい菌株が配合されたもの
- 菌数が十分なもの:1日あたり10億個以上の菌数が含まれているもの
- 膣内投与型も選択肢:経口サプリだけでなく、膣に直接挿入するタイプも有効
ラクトフェリンの活用
ラクトフェリンは悪玉菌を抑制しながら善玉菌の増殖を促す働きがあり、子宮内フローラの改善に役立つとされています。腸溶性タイプのサプリメントを1日300mg以上摂取するのが目安です。乳酸菌サプリとの併用で相乗効果が期待できます。ラクトフェリンの働きや選び方の詳細は以下の記事で解説しています。





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日常生活でできる子宮内フローラケア
食生活の見直し
腸内フローラと子宮内フローラは関連していると考えられています。腸内環境を整えることが、間接的に子宮内の環境改善にもつながります。
- 発酵食品:ヨーグルト、味噌、納豆、キムチなどを積極的に摂る
- 食物繊維:野菜、海藻、きのこ類で善玉菌のエサを供給する
- オリゴ糖:バナナ、玉ねぎ、にんにくなどに含まれるプレバイオティクス
- 糖質の過剰摂取を避ける:過剰な糖質は悪玉菌のエサになる
デリケートゾーンのケア
膣内環境と子宮内フローラは連続しているため、膣内の善玉菌を守ることも重要です。
- 洗いすぎに注意(石鹸での膣内洗浄は善玉菌まで流してしまう)
- 通気性の良い下着を選ぶ
- ビデの過度な使用は避ける
ストレスケア
ストレスは免疫機能を低下させ、細菌バランスを乱す要因になります。十分な睡眠、適度な運動、リラックスできる時間の確保を心がけましょう。
膣内洗浄剤やデリケートゾーン用ソープの過度な使用は、善玉菌まで洗い流してしまい逆効果になることがあります。デリケートゾーンは「洗いすぎない」ことが大切です。
子宮内フローラ検査を受けるべき人
すべての妊活中の方が検査を受ける必要はありませんが、以下に当てはまる方は検討する価値があります。
- 体外受精で良好な胚を移植しても着床しない(反復着床不全)
- 原因不明の流産を繰り返している
- 慢性子宮内膜炎を指摘されたことがある
- 不妊の原因が特定できていない
- 細菌性膣症を繰り返している
検査を希望する場合は、EMMA/ALICE検査に対応している不妊治療専門クリニックを受診してください。すべてのクリニックで実施しているわけではないので、事前に確認が必要です。着床の窓を調べるERA検査との併用も検討してみてください。詳しくは以下の記事をご覧ください。





まとめ
子宮内フローラは、妊活において見逃せない重要な要素です。子宮内のラクトバチルス属の割合が90%以上であれば着床率が大きく向上するというデータは、子宮内環境を整えることの重要性を明確に示しています。
改善のアプローチとしては、乳酸菌サプリの摂取、ラクトフェリンの活用、発酵食品を中心とした食事、デリケートゾーンの適切なケアが挙げられます。体外受精で着床しない方や原因不明の不妊に悩んでいる方は、EMMA/ALICE検査で子宮内フローラの状態を確認してみることをおすすめします。
子宮内フローラと生殖医療の最新情報は日本生殖医学会(www.jsrm.or.jp・サイト終了)で確認できます。不妊治療に関する公的な情報は厚生労働省の公式サイトも参考にしてください。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為を推奨するものではありません。検査や治療については必ず医師にご相談ください。
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