体外受精を繰り返しても流産してしまう、なかなか着床しない。そんな辛い経験をされている方にとって、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)は注目すべき選択肢です。
PGT-Aは、胚移植の前に胚盤胞の染色体の数を調べ、異常のない胚を選んで移植する検査です。染色体異常は流産の最大の原因とされており、正常な染色体を持つ胚を移植することで、流産率の低下と妊娠率の向上が期待できます。
この記事では、PGT-Aの仕組み・費用・メリットとデメリット、そして検査の対象となる方の条件まで、知っておくべき情報を網羅的にまとめました。

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PGT-Aとは?検査の仕組みを解説
PGT-A(Preimplantation Genetic Testing for Aneuploidy)は、体外受精で得られた胚盤胞の一部の細胞を採取し、染色体の数的異常(異数性)がないかを調べる検査です。
ヒトの正常な染色体は46本(23対)ですが、受精卵の段階で染色体の数が多かったり少なかったりすることがあります。これを「異数性」と呼び、体外受精で得られる胚の約40〜60%に何らかの染色体異常があると言われています。年齢が上がるほどこの割合は高くなります。
染色体異常のある胚を移植すると、着床しない・流産する・重篤な障害を持って生まれるなどのリスクがあります。PGT-Aで事前にスクリーニングすることで、これらのリスクを低減できるのです。
PGT-Aの検査の流れ
- 採卵・体外受精:通常通り行う
- 胚盤胞まで培養:5〜6日目まで培養する
- 細胞の採取(生検):胚盤胞の栄養外胚葉から5〜10個の細胞を採取
- 遺伝子解析:次世代シーケンサー(NGS)で全染色体を解析
- 結果判定:正常(euploid)・異常(aneuploid)・モザイク(mosaic)に分類
- 正常胚を選んで移植:次の周期以降で凍結融解胚移植を行う
検査結果が出るまでには通常2〜4週間かかるため、生検を行った周期では移植ができません。凍結保存した胚を、結果が出てから次の周期で移植する流れになります。
PGT-Aの費用
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| PGT-A検査(1個あたり) | 約5万〜11万円 |
| 胚盤胞の生検費用 | 約3万〜5万円 |
| 胚凍結保存料 | 約3万〜5万円 |
| 5個検査した場合の合計目安 | 約30万〜70万円 |
PGT-Aは現時点では保険適用外の自費検査です。1個あたりの検査費用は5万〜11万円程度で、複数の胚を検査する場合は費用がかさみます。
たとえば5個の胚盤胞を検査する場合、検査費用だけで25万〜55万円程度。これに生検費用や凍結保存料を加えると、30万〜70万円程度になるケースが多いです。体外受精の費用に上乗せされるため、経済的な負担は小さくありません。
PGT-Aは日本産科婦人科学会の臨床研究として実施されており、すべてのクリニックで受けられるわけではありません。学会認定の実施施設でのみ検査が可能です。

PGT-Aのメリット
1. 流産率の低下
PGT-Aの最大のメリットは、流産のリスクを大幅に下げられることです。染色体正常胚を移植した場合の流産率は約10%程度と報告されており、PGT-Aなしの場合(約20〜30%)と比較して明らかに低い数値です。
2. 移植あたりの妊娠率が向上
染色体正常胚の移植あたりの着床率は約60〜70%と高く、通常の胚盤胞移植(約40〜50%)と比較して有意に高い結果が出ています。つまり、移植の回数を減らせる可能性があります。
3. 妊娠までの期間短縮
異常胚の移植を避けることで、着床しない周期や流産による治療の中断が減り、結果として妊娠までのトータル期間が短くなる可能性があります。
4. 精神的負担の軽減
「正常な胚を移植している」という安心感は、精神的な支えになります。特に流産を経験された方にとっては、不安の軽減に大きく貢献します。
PGT-Aのデメリット・リスク
1. 費用が高額
前述の通り、複数胚の検査で数十万円の追加費用が発生します。現時点では保険適用外のため、全額自己負担です。
2. 生検による胚へのダメージの可能性
細胞採取の際に胚にダメージを与えるリスクがゼロではありません。ただし、現在の技術では栄養外胚葉(将来胎盤になる部分)から採取するため、胚本体への影響は最小限とされています。
3. 検査精度は100%ではない
PGT-Aの精度は約95〜98%と高いですが、100%ではありません。正常と判定されても流産する可能性はあり、逆にモザイク胚でも正常な赤ちゃんが生まれるケースもあります。
4. 移植できる胚がなくなる可能性
検査の結果、すべての胚が異常と判定される可能性もあります。特に年齢が高い方や採卵数が少ない方は、移植可能な正常胚が得られないリスクを理解しておく必要があります。

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PGT-Aの対象者
日本産科婦人科学会の臨床研究では、以下の条件に該当する方がPGT-Aの対象とされています。
- 反復体外受精不成功:胚移植を2回以上行っても妊娠に至らない方
- 習慣流産・反復流産:2回以上の流産歴がある方
- 染色体構造異常保因者:ご夫婦のいずれかに均衡型転座などの染色体構造異常がある方
上記に該当しない場合(たとえば「初めての体外受精だけどPGT-Aを受けたい」など)は、現在の日本の制度では原則として対象外です。ただし、施設や状況によっては相談に応じてもらえることもあるため、希望がある場合は主治医に確認してみましょう。
PGT-Aに関するよくある質問
Q. PGT-AとPGT-Mの違いは何ですか?
A. PGT-Aは染色体の「数」の異常を調べる検査です。一方、PGT-Mは特定の遺伝性疾患の原因となる遺伝子変異を調べる検査です。目的が異なるため、必要に応じて使い分けます。
Q. モザイク胚は移植できますか?
A. モザイク胚(正常細胞と異常細胞が混在)の取り扱いはクリニックによって方針が異なります。正常胚がない場合にモザイク胚の移植を検討するケースもありますが、十分なカウンセリングを受けたうえで判断する必要があります。
Q. 年齢制限はありますか?
A. 明確な年齢制限はありませんが、一般的に35歳以上の方のほうが染色体異常率が高いため、検査のメリットが大きいとされています。
まとめ
PGT-Aは、移植前に胚の染色体を調べることで流産率の低下と妊娠率の向上を目指す検査です。費用は1個あたり5万〜11万円と高額ですが、反復着床不全や習慣流産に悩む方にとっては、治療の突破口となる可能性があります。
一方で、費用面の負担や「すべての胚が異常」と判定されるリスクもあるため、安易に受けるのではなく、主治医との十分な相談のうえで判断してください。正しい知識を持って、納得のいく治療選択をしていきましょう。
PGT-Aの実施施設や最新の臨床研究については、日本産科婦人科学会の公式サイトで確認できます。不妊治療の保険適用範囲や助成金制度は厚生労働省のページが参考になります。生殖医療の基礎知識は日本生殖医学会のQ&Aもあわせてご覧ください。
※この記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の医療行為を推奨するものではありません。検査の実施については必ず主治医にご相談ください。
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