不妊治療が保険適用になったとはいえ、自己負担はゼロではありません。体外受精を複数回行えば、高額療養費制度を使っても年間で数十万円の出費になることがあります。そんなときに見落としたくないのが、自治体が独自に設けている助成金制度です。
保険適用の自己負担分を補助してくれる自治体や、先進医療の費用を助成してくれる自治体もあります。国の制度だけでなく、お住まいの地域の支援策をフル活用することで、経済的な負担はさらに軽減できます。
この記事では、不妊治療で使える公的な支援制度を「国の制度」と「自治体の制度」に分けて、漏れなく整理しました。「知らなかった」で損をしないよう、ぜひ一度チェックしてみてください。

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国の制度:高額療養費制度
制度の概要
高額療養費制度は、1ヶ月の医療費が自己負担限度額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。不妊治療に限らず、すべての保険適用医療に使える制度ですが、体外受精のように1回の治療費が高額になる場合に特に効果を発揮します。
自己負担限度額の目安
| 年収の目安 | 自己負担限度額(月額) |
|---|---|
| 約370万円以下 | 61,500円 |
| 約370〜770万円 | 85,800円+(総医療費−286,000円)×1% |
| 約770〜1,160万円 | 179,100円+(総医療費−597,000円)×1% |
| 約1,160万円以上 | 270,300円+(総医療費−901,000円)×1% |
※令和8年(2026年)8月時点の金額です。令和8年8月の見直しで限度額が引き上げられ、年単位の上限額(年間上限)も新設されました。令和9年(2027年)8月にはさらに所得区分の細分化が予定されているため、最新の限度額は厚生労働省や加入先の保険者のサイトでご確認ください。
年間上限(令和8年8月から新設)
月ごとの限度額に加えて、1年間の自己負担の上限額が新たに設けられました。年収約770万円以下は年53万円、約770万〜1,160万円は年111万円、約1,160万円超は年168万円、住民税非課税世帯は年29万円です。1年間の自己負担合計がこの額に達すれば、その年はそれ以上の支払いが不要になります。体外受精を何度も行う場合には、この年間上限が負担の天井になります。
活用のポイント
- 「限度額適用認定証」を事前に取得しておけば、窓口での支払い自体が限度額で済む
- 同一世帯で複数人の医療費を合算できる(世帯合算)
- 過去12ヶ月以内に3回以上限度額に達している場合、4回目以降はさらに限度額が下がる(多数回該当)
不妊治療では体外受精を複数回行うことが多いため、「多数回該当」の恩恵を受けられるケースがあります。たとえば年収500万円(区分ウ)の場合、4回目以降は月の限度額が44,400円まで下がります。
「何月にいくら払ったか」を自分でも控えておくと、多数回該当に当てはまるかどうかを把握しやすくなります。医療費の欄がある家計簿を1冊決めておくと便利です。
国の制度:医療費控除
制度の概要
年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告で税金の一部が還付される制度です。不妊治療を受けている方は年間10万円を超えるケースがほとんどなので、確実に活用しましょう。
対象となるもの
- 不妊治療の診察料、検査料、薬代
- 入院費用(差額ベッド代を除く)
- 通院のための交通費(電車・バスなどの公共交通機関)
- 処方された薬の費用
対象外のもの
- 自家用車のガソリン代、駐車場代
- 医師の処方なしのサプリメント代
- 差額ベッド代
還付額は所得税率によって異なりますが、年間の医療費が30万円の場合、所得税率20%の方なら約4万円が還付される計算です。住民税の軽減もあるため、合計の節税効果はさらに大きくなります。
申告のときに慌てないよう、領収書は受け取ったその日に1か所へまとめておくのがおすすめです。

自治体独自の助成金制度
保険適用後も、多くの自治体が不妊治療に対する独自の助成金制度を維持・新設しています。自治体によって内容が大きく異なるため、お住まいの地域の制度を必ず確認してください。
自治体助成金の主な種類
1. 保険適用の自己負担分を助成
保険適用後の3割負担の一部、または全額を助成する自治体があります。高額療養費制度を使った後の自己負担分をさらに補助してくれるケースもあり、実質的な負担をかなり軽くできます。
助成額の目安は自治体によりますが、1回あたり5〜10万円程度のところが多い傾向です。
2. 先進医療の費用を助成
タイムラプス培養、PICSI、ERA検査などの先進医療は保険適用外のため全額自己負担ですが、この費用を助成してくれる自治体もあります。先進医療の費用は1回あたり数万〜十数万円になることもあるため、助成が受けられるかどうかで大きな差が出ます。
3. 交通費の助成
地方に住んでいて都市部の専門クリニックに通う場合、往復の交通費が大きな負担になります。遠方の医療機関への通院交通費を助成する自治体もあるため、該当する方は確認してみてください。
4. 不妊検査の助成
治療開始前の不妊検査にかかる費用を助成する自治体もあります。検査だけで数万円かかることもあるため、これから検査を受ける方はまず助成の有無を確認してからの受診がおすすめです。
自治体の助成金の調べ方
助成金の情報は、以下の方法で調べることができます。
方法1:自治体のホームページで検索
お住まいの市区町村のホームページで「不妊治療 助成金」と検索します。多くの自治体は子育て支援や母子保健のページに情報をまとめています。
方法2:窓口に電話で問い合わせ
市区町村の保健センターや子育て支援課に電話で問い合わせるのが確実です。「不妊治療の助成金制度はありますか?」と聞けば、対象となる制度を教えてもらえます。
方法3:治療先の医療機関に聞く
不妊治療専門のクリニックは、地域の助成金制度に詳しいことが多いです。受付やソーシャルワーカーに相談すれば、使える制度を案内してもらえるケースもあります。
問い合わせた日付や聞いた内容をメモに残しておくと、あとで確認するときに迷いません。通院の記録とまとめて書ける手帳タイプを使っている方もいます。

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助成金の申請手続き
助成金を受け取るためには、治療後に申請手続きを行う必要があります。一般的な流れは以下の通りです。
申請に必要な書類(一般的な例)
- 助成金の申請書(自治体の窓口やホームページから入手)
- 医療機関の受診証明書(治療内容や費用を記載したもの)
- 領収書のコピー
- 住民票
- 夫婦であることを証明する書類(戸籍謄本など)
- 所得証明書(所得制限がある場合)
集める書類はほとんどがA4サイズです。申請用にひとまとめにできるケースがあると、提出前の確認がスムーズになります。
申請には期限があることが多いです。「治療終了後○ヶ月以内」という条件が設けられている場合があるため、治療が終わったら早めに手続きを進めてください。期限を過ぎると助成金が受けられなくなることがあります。
制度を組み合わせた場合の負担イメージ
ここで、各制度を組み合わせた場合の自己負担額をシミュレーションしてみましょう。
例:年収500万円の方が体外受精(総医療費80万円・窓口支払い24万円)を受けた場合
| 制度 | 効果 | 自己負担額 |
|---|---|---|
| 保険適用(3割負担) | 医療費の7割を保険でカバー | 240,000円 |
| 高額療養費制度 | 限度額超過分を払い戻し | 90,940円 |
| 自治体助成金(仮に5万円) | 自己負担分を助成 | 約40,900円 |
| 医療費控除(翌年の確定申告) | 税金の一部が還付 | さらに数千〜数万円軽減 |
すべての制度を活用すれば、窓口での24万円が実質4万円前後まで下がる可能性もあります。制度を知っているかどうかで、数十万円の差が出ることも珍しくありません。

まとめ
不妊治療で活用できる経済的支援は、保険適用・高額療養費制度・自治体の助成金・医療費控除の4つが柱になります。これらを組み合わせることで、自己負担を大幅に軽減することが可能です。
特に見落としがちなのが自治体独自の助成金制度です。お住まいの市区町村に問い合わせるだけで使える制度が見つかることも多いので、まずは確認してみてください。
制度と治療の流れをまとめて読んでおきたい方には、費用面まで扱った書籍もあります。
- 高額療養費制度で月の自己負担に上限が設けられる
- 限度額適用認定証を事前に取得しておくと窓口負担が楽
- 自治体独自の助成金(自己負担分・先進医療・交通費)を確認
- 医療費控除で税金の一部が還付される
- 助成金には申請期限があるため早めに手続きを
- 制度を知っているかどうかで数十万円の差が出ることも
各自治体の助成制度は厚生労働省のページにまとめられています。高額療養費制度は協会けんぽのサイトが詳しいです。医療費控除については国税庁のサイトで確認してみてください。
※この記事の内容は記事執筆時点の情報に基づいています。助成金制度の内容や条件は自治体によって異なり、変更される場合がありますので、最新情報はお住まいの自治体にご確認ください。
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