「精液検査の結果、精子の数が少ないと言われた」「乏精子症と診断されたけれど、何をすればいいのかわからない」――そんな不安を抱えている方は少なくありません。
乏精子症は男性不妊の原因として多く見られる症状のひとつです。ただ、早期に対策を始めることで改善の余地があるケースも報告されています。この記事では、乏精子症の基本的な知識から、医療機関での治療法、生活習慣の見直しやサプリメント・食事の工夫まで、妊活に取り組むご夫婦が知っておきたい情報を幅広くまとめました。

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乏精子症とは?WHOの基準と診断
乏精子症(oligozoospermia)とは、精液中の精子濃度がWHOの定めた基準値を下回っている状態を指します。WHO(世界保健機関)の基準では、精子濃度が1mLあたり1,600万個未満の場合に乏精子症と診断されます。
なお、精液検査の結果は体調やストレス、禁欲期間などで大きく変動します。1回の検査だけで判断するのではなく、2〜3回の検査を経て総合的に診断されるのが一般的です。
乏精子症は精子濃度の程度によって以下のように分類されることがあります。
- 軽度:精子濃度1,000万〜1,600万/mL程度
- 中等度:精子濃度500万〜1,000万/mL程度
- 重度:精子濃度500万/mL未満
乏精子症の主な原因
乏精子症を引き起こす原因はさまざまですが、大きく分けると以下のカテゴリーに分類されます。
精索静脈瘤
精索静脈瘤は、精巣の周囲にある静脈が拡張し、血液の逆流が起こる状態です。男性不妊患者の約30〜40%に精索静脈瘤が見られるとされ、乏精子症の原因として多い疾患です。精巣の温度上昇や血流障害により、精子の産生が妨げられると考えられています。
ホルモン異常
脳下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)の分泌異常により、精子の産生が低下する場合があります。甲状腺機能の異常やプロラクチン値の上昇なども関係することがあります。
生活習慣の影響
喫煙、過度な飲酒、肥満、長時間の座位姿勢、ストレス、睡眠不足などが精子の質や量に影響を与えることが報告されています。また、サウナや長風呂など陰嚢の温度を上昇させる行為も精子の産生にとって好ましくないとされています。
身につけるものを見直すなら、下着は取りかかりやすい部分です。綿やメッシュ素材でゆとりのある形のものが選ばれています。サイズ表記はメーカーによって差があるので、購入前に確認してみてください。
その他の要因
過去の感染症(おたふく風邪による精巣炎など)、停留精巣の既往、抗がん剤の使用歴、先天的な遺伝子異常なども原因として挙げられます。なお、原因が特定できない「特発性」のケースも少なくありません。
医療機関での乏精子症の治療法
乏精子症の治療は、原因や重症度、パートナーの年齢や妊活の状況を総合的に考慮して決定されます。
精索静脈瘤の手術
精索静脈瘤が原因の場合、手術(精索静脈瘤結紮術)による精子の改善が期待できるとされています。顕微鏡下で行う手術が主流で、日帰りまたは短期入院で受けられるケースが多いです。手術後、数か月で精液所見の変化が見られる場合があります。費用は保険適用で3割負担の場合、5万〜10万円程度が目安です(医療機関により異なります)。
ホルモン療法(薬物治療)
クロミフェンクエン酸塩(クロミッド)は、男性にも使用されるホルモン療法の一つです。脳下垂体に働きかけてFSHやLHの分泌を促し、精子の産生を助ける目的で処方されます。ビタミンEと併用されることもあります。効果が出るまでに3か月以上かかるとされ、長期的な服薬が必要な場合があります。
漢方薬による体質サポート
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や八味地黄丸(はちみじおうがん)などの漢方薬が処方されることもあります。体質に合わせた処方が重要なので、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが望ましいです。
人工授精(AIH)・体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)
精子の改善が難しい場合や、パートナーの年齢的な条件から早めのステップアップが望ましい場合は、人工授精や体外受精が検討されます。重度の乏精子症の場合は、1個の精子を卵子に直接注入する顕微授精(ICSI)が選択肢となります。

乏精子症の改善をサポートするサプリメント
サプリメントは医薬品ではないため、乏精子症を直接的に「治す」ものではありません。しかし、栄養状態を整えることで精子の質をサポートする目的で活用される方も増えています。
注目される成分
- 亜鉛:精子の形成に関わるミネラルで、不足すると精子の数や運動率に影響が出るとされています。1日の推奨摂取量は成人男性で11mg程度です
- コエンザイムQ10:抗酸化作用を持ち、精子のミトコンドリア機能をサポートするとされています
- ビタミンC・ビタミンE:抗酸化ビタミンとして知られ、酸化ストレスから精子を守る目的で摂取される方が多いです
- L-カルニチン:精子のエネルギー代謝に関与する成分です
- セレン:精子の構造維持に関わる微量ミネラルとされています
サプリメントの過剰摂取は逆効果になる場合があります。例えば亜鉛の過剰摂取は吐き気や免疫機能の低下につながることがあります。必ず用量を守り、できれば医師や薬剤師に相談してから始めるようにしてください。効果の実感には3か月程度の継続が目安とされています。
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食事で意識したい栄養素と食材
サプリメントに頼る前に、まずは日々の食事を見直すことも大切です。精子の生成には約74日かかるとされているため、食生活の改善は長い目で続けていくことが重要です。
積極的に摂りたい食材
- 牡蠣・赤身肉:亜鉛が豊富に含まれています
- ナッツ類(くるみ・アーモンド):ビタミンE、セレン、良質な脂質を含みます
- トマト:リコピンが豊富で、抗酸化作用が期待されています
- 緑黄色野菜:ビタミンC・葉酸などの栄養素を含みます
- 青魚(サバ・イワシ):DHAやEPAなどの良質な脂肪酸を含みます
- 卵:良質なタンパク質やビタミンB群が含まれています
このなかでいちばん手軽なのがナッツ類です。素焼きタイプなら味付けが濃くならず、おつまみや間食としてそのまま食べられます。
控えたほうがよい食習慣
- 加工食品やファストフードの過度な摂取
- 過剰な糖質やトランス脂肪酸の摂取
- アルコールの大量摂取

生活習慣の改善ポイント
食事やサプリに加えて、日常生活の中で見直せるポイントもあります。
- 禁煙:喫煙は精子のDNA損傷や運動率低下と関連があるとされています
- 適度な運動:ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が推奨されます。ただし、過度な運動(長距離の自転車など)は陰嚢への圧迫や温度上昇につながるため注意が必要です
- 睡眠の確保:7〜8時間の質のよい睡眠がホルモンバランスの維持に役立ちます
- ストレス管理:慢性的なストレスはホルモン分泌に影響を与えます
- 陰嚢の温度管理:長時間の入浴やサウナ、膝の上でのノートPCの使用を避けるなど、精巣の温度を上げすぎない工夫が大切です
- ブリーフよりトランクス:通気性のよい下着を選ぶことで陰嚢の温度上昇を防ぎやすくなります
ウォーキングを始めるなら、まずは靴からという方も多いです。クッション性やワイズ(足囲)は商品ページに記載があるので、普段の靴と比べながら選んでみてください。
パートナーと一緒に取り組む妊活の心構え
乏精子症と診断されると、男性側が落ち込んでしまうことは珍しくありません。しかし、妊活は夫婦で取り組むものです。お互いの気持ちに寄り添いながら、一緒に生活習慣を改善していくことが大切です。
パートナーに打ち明けにくいと感じる方もいるかもしれませんが、治療や生活改善を進めるうえで、パートナーの理解と協力は欠かせません。医療機関によっては夫婦一緒に受診できるところもあるため、活用してみてください。
よくある質問(Q&A)
Q. 乏精子症は自然妊娠できないのですか?
A. 精子濃度の程度や運動率によりますが、軽度の乏精子症であれば自然妊娠の可能性はあります。タイミング法を併用しながら生活改善に取り組むケースもあります。ただし、重度の場合は人工授精や体外受精へのステップアップが検討されます。
Q. サプリメントだけで乏精子症は改善しますか?
A. サプリメントはあくまで栄養面でのサポートです。精索静脈瘤やホルモン異常など器質的な原因がある場合は、医療機関での治療と並行して活用するのが望ましいでしょう。
Q. 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 精子の生成サイクルは約74日(約2〜3か月)です。そのため、薬物治療や生活改善の効果を確認するまでに最低でも3〜6か月の継続が推奨されます。精索静脈瘤の手術後も、精液所見の改善には3〜6か月程度を見ておく必要があります。
Q. 精液検査はどこで受けられますか?
A. 泌尿器科、男性不妊外来、不妊治療専門クリニックなどで受けることができます。費用は保険適用の場合、数千円程度です。
受診の前に全体像をつかんでおきたい方は、男性側の検査や治療の流れを解説した書籍を読んでおくと、診察で確認したいことを整理しやすくなります。

まとめ
乏精子症は男性不妊の主な原因のひとつですが、原因を特定し、適切な治療と生活改善に取り組むことで変化が期待できるケースもあります。
まずは専門医のもとで精液検査を受け、自分の状態を正確に把握することが第一歩です。治療と並行して、食事の見直しやサプリメントの活用、生活習慣の改善にも取り組んでみてください。
妊活は一人で抱え込むものではありません。パートナーと一緒に、無理のないペースで進めていきましょう。
参考:日本生殖医学会 / MSDマニュアル家庭版 / WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen
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